ソクラテス式問答法をするための3つの注意

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ソクラテス式問答法とは

 

ソクラテス式問答法とは質問によって相手の理解を得るための方法です。

基本的には相手に質問を投げかけることで会話が進みます。

議論で相手を説得することはしません。

かといって相手の話を聴いているだけにはしません。

議論をせずに相手に気づいてもらうことがソクラテス式問答法の目的です。

議論と傾聴の間に位置することはバランスは難しいですが、理解は難しくはありません。

しかし、「誘導尋問」との違いは解りにくいことが多いです。

また、解っていても油断をすると誘導尋問になってしまいます。

ソクラテス式質問を説明するために誘導尋問との違いを説明します。

すこし込み入った話になりますが役立つ方法なので是非読んでくだ

 

誘導尋問との違い

誘導尋問とは自分の都合の良い答えを相手から言わせる方法です。

誘導尋問と大きく違うところは

あらかじめ予想した答えに導くためのものではない、というところです。

ソクラテス式問答法では目的とする答えを用意することはしません。

質問をしますが、目的地をあらかじめ決めておくことはしません。

相手の話を聞き、理解できないところを質問していくことで様々なことがはっきりしてきます。

その過程で、「自分はこのように考えていたから、辛い気持ちになったんだ。」

と気づくのですが、時には治療者が理解していなくとも気づきが出るときがあります。

完全に何の仮説も持たずに会話をすることは無理なことです。

しかし、仮説に近づけようと思って会話をすることは誘導尋問になります。

仮説を持つことは悪いことではないですが、仮説は仮説に過ぎません。

仮説を証明するためではなく、様々な仮説を立てる、それを質問していくとで相手が気づく。

という流れになることが必要です。

仮説を定めてそこに誘導してしまうと、誘導尋問です。

いくら相手の言葉で言わせたとしても、誘導尋問であれば説得と同じになってしまいます。

 

ソクラテス

 

次はソクラテス式問答法の元祖、ソクラテスについての説明です。

ソクラテスは今から2500年前の古代ギリシャの哲学者です。

哲学の祖とも言われています。

ものすごく簡単に説明させていただくと

「無知の知」として知らないことを知っていることこそ「知」であるという思想を持った哲学者として登場します。

方法としては「ソクラテス式問答法」を用いて、自分はよく知っていると信じているその他の哲学者に対して、無知の知を自覚するよう促したと言われます。

妻は悪妻として有名なクサンチッペです。

「よい妻を持てば幸せになれる。悪い妻を持てば私のように哲学者になれる。」

と言ったと言われますが、実際のところははっきりしていません。

最後には「国家の認める神々を認めず、新しい鬼神(ダイモーン)の祭りを導入し、かつ青年に害悪を及ぼす」といういがかりに近い罪で死刑を宣告されます。

この時代は国外に逃亡すれば罪から免れる方法があったとのことですが

「悪法もまた法なり。」といって毒人参を飲んで死にました。

 

ソクラテス式問答の使用例

 

「何がそんなに悲しいんですか?」

「わからないです。」

「父がなくなったんですけど、それは良いんです。父は精一杯病気と戦いましたから」

「それでも、父が亡くなったら悲しい人が多いと思いますがどうですか?」

「でも、父は頑張ってましたから。」

「自分の気持ちはどうですか?」

「・・・・・。」

「父とはどんな関係でした?」

「とても頼りにしていました。」

「何か父との思い出とかありますか。」

「・・・・。私は父が亡くなって寂しかったんですね。」

これを直接「あなたは父が亡くなって寂しいんですね。」と聞くと、

「父は頑張って生きていましたからそんなこと考えてはいけないんです。」

と話すかもしれません。

議論すること無く、ただ聴くわけでもない。

かといって、誘導尋問のように決められた仮説に行く訳でもありません。

会話の流れで自然に理解を促せていけるのが理想です。

 

ソクラテス式問答の注意

 

大事な注意は今までに説明してきた誘導尋問にならないことです。

そのためにどうして行けば良いのかということについて説明します。

①なるべく開かれた質問にする

イエス、ノーで答える質問を閉じられた質問と言い、

相手が自由に答えられる質問を開かれた質問と言います。

誘導尋問にならないためには開かれた質問を多く使うようにすることが必要です。

②変化を目的とする

これは傾聴にならないための方法です。

しかし、特定の変化を目的としてはいけません。

変化を目的としつつも、どのように変化するかということに関しては柔軟になる必要があります。

③抵抗がある場合には別の方向から

先ほどの例でいえば会話で「・・・・。」となったところなどです。

自分では解っているけど認めたくない時に「抵抗」があると言います。

そこを「あなたは父を無くして悲しんでいるのにそれを受け入れられないんじゃないですか。」

という聞き方をしてしまうと、誘導尋問になります。

あくまでも別の方向から。

それでも抵抗がある場合は、無理に言わせる誘導尋問になる前に、今は言いたくないんだなと察することが必要です。

質問をなげかけ、時間が経ち、受け入れられるようになって抵抗が解けるのを待った方が結果的に変化するのも早くなります。

ソクラテス式問答法についての説明でした。

 

 

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One Response to “ソクラテス式問答法をするための3つの注意”

  1. テツ より:

    はじめまして。認知行動療法における「ソクラテス的問答」について調べていて貴サイトに参りました。とても参考になるご説明有難うございます。なぜソクラテス的問答について調べたいと思ったかと言いますと、自分が統合失調症で入院中に臨床心理士の先生に心理カウンセリングを受けたのですが、会話がはずまないことにいらいらして、カウンセリングを勝手に中断したという経緯があったからです。きっと今にして思えば、あれは「ソクラテス的問答」だったのだろうと思うのです。心理士の先生には悪いことをしたなと思っています。時を経て、私自身が精神保健福祉士になり、専門職の側に立ったとき、あの時のカウンセリングの意味を再確認したいという思いがあり、調べていた次第です。長文失礼いたしました。

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